Summicron 5cm f2 1st CollapsibleとNIKKOR H·C 5cm f2の比較、2回目です。(前回の比較は、こちら。)
今回は、F値の変化による解像力を比較しました。
< 撮影条件 >
・ 一台のカメラでレンズを交換して撮影。露出設定も同じ。
・ 三脚を使用してカメラと被写体との距離は固定したまま、レンズ交換のみを行い撮影。撮影距離は約1m。
・ 同じ被写体を同一フィルムで連続して撮影しており、現像条件も同じ。
・スキャニングの設定も同一数値、コントラスト調整はなし。
なお、作例の色がくすんでいるのは被写体自体によるものです。
以下、本文中ではSummicron 5cm f2を”50cron”、NIKKOR H·C 5cm f2を”NKR50”と省略して記載します。
比較画像 : F2


どちらもピントはフレーム中心の『物』に合わせています。



フレームの中心部分で比較すると、NKR50は50cronに比べて線が甘くややぼやけています。フォーカスシフトが生じているのかもしれません。
対して、左下部分ではNKR50よりも50cronの解像力が低く、文字のひび割れが不鮮明です。
また、50cronは樽型の歪曲収差が目立ちます。
レンズを見比べると50cronはNKR50よりも前玉の曲率が大きいようで、これが像面湾曲による周辺部のボケや樽型収差の要因の一つであると思われます。
なお、レンズ繰り出し量(∞から約1mまで鏡胴が伸びた時に約1mmほど)の差があり、NKR50の画角はやや狭くなっています。
比較画像 : F4




解放から2STEP絞ったF4では、フレームの中心も左下もほぼ同等の解像力です。
比較画像 : F8




解放から4STEP絞ったF8でも、フレーム中心・左下ともにほぼ同等の解像力です。
被写体が平面のためか、どちらも絞りをF4からF8へ変えても解像力に明確な差が現れませんでした。
作例 : 絞り開放での比較


看板に接近した画像だけでは面白くありませんので、中~遠距離の被写体を絞り開放で撮影してみました。
ピントはフレーム中心、立て看板の文字に合わせています。

強い日差しの半逆光という撮影条件で看板が白いため、どちらも中心部分での解像感が低下していますが…

フレーム中心部分で看板の左右をさらに拡大すると、解像力/ボケに明らかな違いが見られます。
50cronは看板左側奥の”KOBAN”が読み取れるのに対し、NKR50は”B”か”R”かが明瞭でありません。
また、看板右側のテントにある赤色のロゴや、椅子・机にも解像力の差が見られます。
考察
これまで掲載した画像から50cronとNKR50の描写を比較すると
1.絞り開放でフレーム中心部分を比較すると、50cronの方が解像力が高い。
2.絞り開放で画面の隅を比較すると、50cronの方が解像力が低い。50cronに比べるとNKR50は画面中央から隅にかけての解像力低下が抑えられている。
と言えます。
さらに…

前回掲載した画像も加えて考察すると
3.被写界深度内に入っていない部分、特に後ボケは50cronよりもNKR50の方がボケやすい。
とも言えます。
つまり、
50cron:絞り開放から中央部の解像度は高いが、絞り開放では周辺部での解像力低下(ボケ)が目立つ。
NKR50:フレーム中心から隅にかけての解像力低下(=フレーム左右方向でのボケ量)は50cronよりも控えめ。
と言った、レンズ構成や設計の違いが見られるようです。
ただ、NKR50は左右方向でのボケ量が50cronより控えめでありながら、後ボケは50cronよりもNKR50の方がボケやすいのが気になります。
やはり、両者の焦点深度に違いがあるのでは…?
次回は、奥行方向での被写界深度/ボケ方についての比較を掲載します。