レンズレビュー : Leica Summicron 35mm f2 ASPH. v1 – 11882

Nikon F のオーバーホール後について投稿したかったのですが、まだ完了していません。

依頼してから7か月経過したため問い合わせたところ「作業中、全体的に納期が遅延している」とのこと。

依頼直前の投稿をご覧になり関心をお持ちの方が多いようですが、結果を投稿できるのは今しばらく先になりそうです。

そこで今回は、フィルム撮影時のメインレンズ Leica Summicron 35mm f2 ASPH. v1 についてレビューします。

説明不要の王道レンズ。

ご存じの方も多いので、ここではレンズの解説などは避けて私なりの所感をつれづれなるままに書いてゆきます。

購入に至るまで

私のレンズはシルバーの11882、シリアルナンバー:421xxxxの2012年製で、昔からお世話になっている専門店にあった新古品です。3本あった中から選ぶことができ、持参していたLeica M-Aに装着して距離計が無限遠で合致するかもコリメーターで確認してもらいました。今思うと贅沢な買い方です。

3本のうちで最も新しかった2012年製を選んだのは、生産後期の方が公表されていない品質向上が期待できそうという打算があったから。

程度の良い中古品の購入も検討していたのですが、某有名修理店にOHについて伺ったところ『だいたい6-7万円です。 見た目がきれいでも中身に問題があるレンズも多いので…』とのこと。当時の中古品相場にOH代を加えると新古品の方が安い、それなら新古品があるうちにと思い購入に至りました。

フードはSQUAREHOODの35mm用を使用。
12585も捨てがたく、たまに付け替えて使用します。

作例

Leica M-Aと合わせて一生物の機材にしたかったため、新品の11674や35luxの購入も検討していましたが、カラーネガフィルムを使う私には35cron ASPH. v1の描写があっているようです。理由は後ほど詳述します。

なお、作例で *i はインスタグラムへ投稿した画像の高解像度版を再掲したものです。

*i ほぼ最短距離 F2, Kodak ProImage 100
滑らかな階調や自然なボケがたまりません。
*i F2, Kodak ProImage 100
白い被写体もきれいな諧調を残します。
*i F2.8, Kodak ProImage 100
塗り重ねたペンキの質感がよく表れています。 
*i F9.5,Kodak Gold 200
絞っても硬くなりすぎないのも好みです。
F4.5, Kodak Gold 200
建物の上下方向でわずかに糸巻型の歪曲が見られます。

35cron ASPH. v1 のボケ

35luxか35cronか、35cronもASPH. v1かv2かKOBかなど、ボケとシャープネスは好みが分かれるところ。

個人的には35cron ASPH. v1が最適で、硬すぎない解像感と自然なボケ方のバランスの良さを気に入っています。

35lux ASPH. v1やFLE. v1も美しい諧調やボケで気になるレンズではあるのですが、私にはボケがややうるさいように感じられる時があります。

(渦巻きボケが抑制されていると聞く、Light lens labの35mm AAは気になりますね。)

簡単な比較ですが、渦巻きボケが出やすいElmar 3.5cmと35cronを比較してみました。

Elmar 3.5cm F4, Kodak Portra 400 (ISO320)
35cron ASPH. v1 F4, Kodak Portra 400 (ISO320)

背景の建物・画面の下部・木の葉などを比較すると、優れた収差補正によって35cronのボケが自然であるとわかります。

フォーカスシフト

まれに話題となるフォーカスシフト発生の問題。

F2.8-F4という使いたいF値に設定し至近距離で撮影すると後ピンが発生しやすいという難点です。

フィルムで撮影すると目立たず、むしろ体の揺れでピントが甘くなる方が問題ですが、35cron ASPH.は解像力が高い大口径レンズで、デジタルのM型は高画素なのも相まって顕著となるようです。

至近距離・日の丸構図(Centered composition)に限られるのですが、右図ようなフォーカシングとフレーミングで対策できるかもしれません。

Fig. 1 コサイン誤差の原理
Fig. 2 フォーカスシフトとの相殺

STEP1: 被写体からやや左右にずらした位置(二重像パッチの1/2~1つ分程度)でピントを合わせる。

STEP2: 被写体が中央となるようにフレーミングし直す。

これによりコサイン誤差による前ピンとフォーカスシフトによる後ピンが相殺できるのではないかと。

最短距離 F4, Kodak ProImage 100
中央よりもやや左で二重像を合わせ再フレームした例

被写体までの距離・フレームの移動角度によってピントのズレ量も異なるので「相殺できるかもしれない」という程度の理論・手法とご理解ください。

また、くれぐれも逆の手順(中央で合わせてから再フレームする)はなさらぬよう。

コサイン誤差による後ピンにフォーカスシフトによる後ピンが加わり、さらにピントズレが生じかねません。

「二重像が合う一歩手前で止める」という手法も知られていますが、こちらも”一歩”のバランスが難しい。

被写界深度によってカバーされることも多いですから、気にしすぎずに楽しく撮影するのが一番かもしれません。

購入を検討される方へ

このレンズの購入を検討されている方には、ぜひ分解されていない後期生産品の購入をお勧めします。

もちろん、予算とフードの好みが合えば v2 でも。

高度なOHが施されている場合は別ですが、製造時に厳格な公差管理が行われ、高度な計測器でレンズの芯出しも行っているレンズです。

”安く買って安く直して”は避けたほうが良いでしょう。

また、製造から年数が浅いと比較的程度が良いのはもちろん、微細な仕様変更が期待できるとのことです。(ただし、仕様変更は根拠が明確でないため”噂”に留まります。)


コーティングの進化

前期がアンバー・マゼンタ系の反射が見られるのに対し、後期は緑色や紫色の反射が混ざるマルチコーティングに変化しており、ゴーストやフレア耐性が向上している。

組み立て精度の向上

長期間の製造を経て内部パーツの工作精度と組み立て工程が洗練されており、グリスの選定や部品の噛み合わせが安定した。また、工場出荷時の調整基準がデジタル基準(M9 や M240 等)に引き上げられており、実用上の精度が向上している。

フォーカスシフトの抑制

部品公差の厳格化と組み立て工程におけるピント位置の最適化がなされ、被写界深度内にフォーカスシフトが収まるように厳密な調整がされている。(フォーカスシフトの報告は前期品に多い。)


ご本人が使って楽しいのであれば、このレンズに限らずどのレンズでも良いには違いありません。

もし、解像力と自然なボケに魅力を感じておられるのであればご参考まで。

以上、いかがでしたでしょうか。

個人的には「残すならこれ1本」というレンズ、また作例も掲載したいと思います。

確約はできませんが、次回こそ OH後のNikon F についてレビューする予定です。

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